マットとリサとカップルは、オーストラリア・シドニー郊外のブルーマウンテンにタイニーハウスを作ってそこで暮らし始めて4ヶ月ほどになります。
タイニーハウスに住むというアイデアは元々リサが持っていたものでした。
リサはマットと出会う以前から、テレビのリアリティショーやSNSなどを見てタイニーハウスの生活に強い興味を持っており、いつかは自分も作ってみたいとずっと思っていました。
その後マットと出会って交際が始まりましたが、マットは特にタイニーハウスに関心を持っていたわけではありませんでした。
リサがマットを説得し、マットも彼女がそれほど熱意を持っているのなら、と、彼女の希望をかなえてあげたいと思った事と、彼自身もものづくりが好きで何かにチャレンジすることに前向きな性格だったこともあって、二人のためのタイニーハウスを作ってみることにしたのです。
黒を基調にしたシックな外観のタイニーハウスは、友人やマットの同僚たちの助けも借りながら、ほぼDIYで作りました。
マットはバスルームやキッチンのリノベーションを手がける会社を経営していたので、家作りや大工仕事に関する知識を持っていました。
マットの頭の中にあって、今までクライアントの家では実現する機会のなかったデザインのアイデアをこの機会に形にすることもできました。
自然に囲まれた敷地に建っているタイニーハウスには広いデッキがつけてあり、家の裏側には、マットが飼っている猫たちが走り回れるスペースが作られていて、猫専用の通路を通って家と行き来できるようにしてあります。
猫たちをタイニーハウスの中だけに閉じ込めてしまうのはかわいそうに感じましたが、家の外は広大な自然が広がっていて、外に放して帰って来られなくなってしまうのも困るので、猫が遊べて迷子になる心配のないスペースを確保することにしたのです。
一般的なタイニーハウスよりも天井を高くしてある二人の家は、立ち上がることのできるロフトが2ヶ所あり、大きな天窓もついていて、狭さを感じません。
また、マットが本職を活かして作ったバスルームは、他のタイニーハウスでは例がないほど大きく、二人が並んで使える洗面台に、シャワーも2つついています。
カップルがタイニーハウスに住み始めるにあたって、「お互いが必要なものを、いかにして限られたスペースで無理なく実現するか」はとても重要です。
二人も、キッチンの広さやトイレの形式を水洗にするかコンポストタイプにするかなど、互いに話し合って妥協点を探らなければならないことがたくさんありました。
マットはそれまで一般的な広さのいわゆる普通の家に住んでおり、リサはキッチンの付いていない小さな家で暮らしていたので、それぞれの基準が違っていたのです。
結局キッチンは二人がそれぞれ考えていたサイズの中間くらいの広さになり、トイレは水洗式を採用しました。
この他にもマットとリサは、個人のスペースが確保できるように工夫を凝らした家を作りました。
クローゼットや身の回り品の収納などはそれぞれに一つずつ作り、互いに相手の荷物で自分の場所が侵食されているという不満を持ったり、スペースの取り分をめぐって衝突したりしないようになっています。
リサの強い希望から始まったタイニーハウス作りですが、マットも自分のアイデアを形にして多くの時間と労力を費やして完成させたこの家に、大きな達成感と満足を感じています。
新たに別の家に住むことなど今は考えられないほど、二人とも心から気に入る家ができました。