マイケルとティファニー夫妻は健康に有害な材料が入っていない材料で家を建てたいと思っていました。
ティファニーの父は建築士でしたが、10年前に中皮腫のために亡くなりました。中皮腫は建築素材のアスベストが原因で発症する病気です。彼は自分の家を建てることが夢でしたが、それは叶いませんでした。
マイケル自身も同じく建築士です。義父のやり残したことを引き継いで自分たちで家を建てようと決意し、その材料には健康に有害な物質を使わずに家づくりをしようと考えました。
ティファニーは大学で建築生態学を学び、そこに住む人だけでなく家を作る建設業者にとっても無害な材料を使った家づくりをしたいと考えていました。
そこで二人が家のメインの材料にしようと考えたのが麻でした。麻は何百年も前から人間が建物の材料としてきた古い素材ですが、近代化が進むにしたがって段々と使われなくなってしまいました。
また最近になって見直されつつあるようですが、マイケルは、麻はより良い未来のための素材であると信じています。
オーストラリアで家を建てるということに関連して、麻は非常に優秀な断熱材となります。マイケル達が住んでいるところは亜熱帯の気候に属しているため、建物の内側の湿気とカビに悩まされるのです。
麻を使った素材、ヘンプクリート(麻とその他の材料を混ぜて作る素材 参考:Wiki)でできた壁は家の中の湿気を外に逃がしてくれてカビの発生を抑えることができます。また、強い日差しで家の中に熱がこもるのも防いでくれます。
麻を使った壁は、一般的な材料で作る壁よりも5~10%くらいコストがかかります。でも家全体を作る費用の中で、壁にかかるお金はそんなに大きな部分を占めているわけではありません。トータルの費用で考えると、一般的な家の作り方と比べてそこまでとんでもなく高くなるということはないと思います。
この家は、地域の人々の協力によって建てられました。友達やボランティアの人がたくさん来て、手を貸してくれたのです。そして夫妻の子どもたちも作業に加わり、家を作る一部始終をすぐ目の前で見ることが出来たこともとても喜ばしいことでした。
建設に使った材料がどれも人間に無害なものばかりだったので、そのようなことができたのです。普通の建設現場では子どもや知識のない人が触ると危険な材料がたくさんあります。
多くの人の手が加わったことは、この家についてだけでなく、これからのプロジェクトにとっても大きな意味を持ちます。
今回はマイケルがクライアント側で、人々に家を建ててもらいました。今度はマイケルが他の人のための家や建物のプロジェクトを進める際に、ここで自然素材について学んだ人たちにマイケルのチームに加わってもらうのです。
人体や環境に優しい家づくりについて人々が知り、自分たちもその作業の一部として参加することで、それがこれからの地球環境に良い変化をもたらしていけるのだという自信や更なる行動につながっていくのです。