ポールとアネットは、オーストラリア郊外にあるDIYで作ったタイニーハウスに住んでいます。
この家での暮らしは1年ほどになります。
二人のタイニーハウスは、外からの電線や水道を引かない完全なオフグリッドの家です。
もともとCO2の削減や再生可能エネルギーの利用に取り組みたいと考えていたポールが、実験の意味も込めて作った家ですが、今のところ、その生活にとても満足しています。
必要な電力はソーラーパネルでまかない、水は雨水を大きな貯水タンクに集めて利用しています。
オーストラリアでは度々干ばつが起こりますが、今のところ、この家の貯水タンクの収容量で雨の少ない時期をうまく乗り切っています。
また、食べ物の残りや菜園で出るごみなどを利用してバイオガスを発生させ、料理に使っています。
ただ、バイオガスのシステムは、動かすのに大量の水が必要なので、雨の少ない今は使う事ができず、かわりに電気ヒーターを使って料理をしています。
エアコン、洗濯機とオーブンは動かすのに大きな電力が必要なので、天気が良い時しか使えませんが、天気が悪ければ、気温もあまり上がらないのでエアコンは必要なく、洗濯物も干せないので洗濯機を回すこともありません。
必要な時にはきちんと使えているので、不便だと思ったことはありません。
ポールは家でIT関連の仕事をしていますが、パソコンを動かす程度の電力ならば天気が悪くても蓄電池などを使う事ができるので、電力不足で困ったことはありません。
彼らは、この家に住み始めてからこれまで、大きな試練だと感じたことは特に無いそうです。
ソーラーパネルやバイオガスなど、自然の力に頼っているシステムは毎日同じように電力やガスが供給できるわけではありません。場合によっては必要な時に使えないこともあります。
ですが、それも1日か2日の我慢が必要なだけで、あとは自分たちの消費するエネルギーに少し目を向けることができれば、所謂一般的な家での生活と特に大きく違ったところはないのです。
ここで生活していると、電気や水は無限のものではなく、限りある資源を大切に使わなければいけないという意識ができます。
この家を置いている土地は借りているものですが、地主との関係もうまくいっており、ここでの生活は順調に過ぎています。
シドニーの都会でアパートメントに住んでいた頃と、この1年を比べると、20,000オーストラリアドル分の出費を浮かすことができています。
二人は休暇を利用して3週間ほど日本へ旅行することを計画していますが、このタイニーハウスでの生活は、金銭的な面だけでなく、思い立ったらいつでも好きな時にこのような長期の旅行を楽しめる時間的な余裕も作ってくれました。
旅行など好きな事を楽しんだり、将来的に自分たちの土地を買うための貯金を作ったりなど、人生の選択肢が増えたのです。
この家での生活を始める事は、ある種の賭けのような部分もありましたが、二人は現在のライフスタイルに心から満足しています。