ニルヴァーナとガウリ・マの夫妻は、オーストラリア・ニューサウルウェールズ州のベガにある自然豊かな土地にあるタイニーハウスに住んでいます。
二人とも、もうシニア世代にさしかかっている年齢ですが、結婚したのはつい最近のことです。
それぞれ結婚して子供を持つという別々の人生を歩んできましたが、子どもたちも成長して巣立ち、二人が互いにシングルとなってしまった後で、老後の人生の新たなパートナーを得たのです。
それぞれ違う生活を送っては来ましたが、二人とも引っ越しをたくさん繰り返してきたという点は共通しており、この先落ち着いてゆっくりとした生活をしたいと考えた時に、自分たちにとって最適だと思えた暮らしが「タイニーハウス」でした。
このタイニーハウスは、エンジニアリングを専門としていたニルヴァーナが主に設計しましたが、タイニーハウスについて色々と見ていく中で、まるでトランスフォーマーのように床や屋根を収納したり延長したりできる家を動画で知り、そのアイデアを自分たちも実践してみようと考えました。
二人のタイニーハウスも、移動する時は法的な制限に従って、トレーラーの荷台に収まる大きさですが、家として設置する際は、壁の一部が外に向かって倒れるように開き、屋根と床が延長されます。
壁や窓枠を別々のパーツとして後から取り付けて、元の家の倍近い面積まで拡大することができます。
また、神聖幾何学のデザインを取り入れることによって、多くのタイニーハウスに見られるような直線的な感じではなく、アーチや円の要素を多く取り入れています。
小さくて四角いタイニーハウスはマッチ箱のような感じになりがちですが、この家はよりアートを感じさせるデザインになっています。
この家は、日が昇って一日の始めのエネルギーを得る北東にキッチン、ベッドは休息の方角である南側というように、東洋の風水のような、方角によって得られるパワーがあるという考えに基づいてレイアウトが決められています。
日が沈んでその日の疲れや汚れを落とす西はシャワーやトイレの場所ですが、現在バスルームは、家の外に別に作ってあります。
寒くなってくる頃には家の中でシャワーを浴びられるように、西側にスペースを確保しています。
二人は、ガウリ・マの友人が所有する自然豊かな土地の一部にタイニーハウスを置かせてもらっており、そのおかげで家の外には、家の面積よりも広い家庭菜園を作ることができました。
小さな空間である分、素材やデザインに自分たちの美学を妥協なく反映させることができたこの家での生活は、想像以上に快適でした。
二人のような熟年のカップルにとって、タイニーハウスを作る過程は、それまでの人生の集大成そのものでした。
それぞれの人生の中で、大家族がいたり、大きな家に住んだりとたくさんの物に囲まれて生きてきた二人ですが、出会って一緒になり、タイニーハウスという小さな空間に落ち着くことを決めてからは、今までの人生の中で積み重ねてきた多くの物たちを見つめ直しました。
大部分は子どもたちに譲って、これからの人生に本当に大切なものだけを選び取って残してきました。
この家での生活を通して、まだ新しい二人の関係もゆっくりと育っていると感じています。