カナダ人のクラリッサは2年ほど前からバンに乗って旅をしています。
小さな街で育ったクラリッサは、そこから出て広い世界を自由に見て回りたいとずっと考えており、ネットでバンの中に住んで旅をしている人たちを知り、自分も同じようにやってみようと思うようになりました。
クラリッサは1983年製の中古のバンを買って簡単な改装を施し、そこで暮らし始めました。
彼女のバンには室内で水が使えるキッチンと冷蔵庫、ベッドと、あとは衣類や生活用品の収納スペースが備えられています。
シャワーはなく、簡易式のトイレはありますが、メンテナンスが大変なのであまり使っていません。
夜は公園など、人のあまりいないところに車を停めています。住宅街ではバンに住んでいる人が来るのを好まない人々もいるからです。
これまで色々なところを回って旅をしていましたが、今は次の旅の資金を作らなければならないので、一か所に留まって2つの仕事を掛け持ちし、週6日働いています。
そのためフルタイムで旅をする自由な生活は一旦休止しており、バンで遠くに出かけられるのは休日だけです。
旅を始める前に思い描いていたような頻繁な旅はあまりできていませんが、それでも今のバンでの生活をありのままに受け入れて楽しんでいます。
彼女がバンでの生活で最も大変だと感じるのは、主に冬です。
カナダの冬の気候は厳しく、車や設備の故障などの問題も起きやすくなります。
クラリッサ自身はあまり大工仕事や工作が得意ではなく、冷蔵庫の扉など一部壊れたままになっているものもありますが、何とか自分の力で対処していくうちに段々と慣れてきて、今では日常の一部としてこなせるようになりました。
また、一度虫垂炎になってしまったことがあり、病院で手術を受けた後、このバンで一人きりで療養しなければなりませんでしたが、それがこれまでのバン生活の中で最悪な時でした。
そんな時には、温かいシャワーやもっと広いスペースでゆっくり休める生活を恋しく思った瞬間もありました。
バンでの生活で一番満足している事は、バンに積んで一緒に旅をしている物たち全てが借り物ではなく自分自身の所有物であり、自分にとって必要な全ての物を持って移動し、生活することができるという点です。
自由な生活をしていると感じられるのも、自分が必要なものを全て持っているからこそだと考えています。
また、旅の途中で出会った、同じようなバンライフを送っている人たちとのつながりも大切な財産です。
将来的には、これからもできる限り長くこのバンでの生活を続けたいと思っています。
ただ、このバンは80年代製と古い物なので、必ず動かなくなってしまう時が来るでしょう。
それはまだまだ先の事ですし、これから家族を持つこともあるかもしれませんが、その時はどこかに土地を買い、そこでタイニーハウスでの生活をしたいと考えています。
バンで生活をするこということは、ずっと旅をし続けるということではありません。
クラリッサのように、ある時は旅をして、ある時は移動せずに働いてという生活でも、それが自分で決めて、自分の気持ちの赴くままにできている事であれば、それは十分に自由な生活と言えるでしょう。
その自由こそバンライフでの一番の醍醐味ではないでしょうか。