グラフィックデザイナー兼フォトグラファーをしているネイサンは、古いスクールバスを改装してモバイルオフィスにしています。
彼の作品、特に写真はフォトマニュピレーションやシュールレアリスムと呼ばれるジャンルで、非現実的な世界観をテーマにしています。
非現実的なものを、本当に目の前で起きているように見せるためには小道具や照明など様々な工夫が必要で、場所も山の中や海辺など、作品にふさわしい場所を探して色々な所に行きます。
このバスに完全に住み込んで生活をしているというわけではありませんが、車内でデスクに向かって編集などをしたり、また、写真のロケーションに良い所を探して長距離の移動をして、山奥で何日かかけて作品を仕上げたりと、デスクワークと実地でのプロジェクトの両方が快適にできる便利なオフィスです。
ネイサンの父が病気で腎臓移植が必要となった時、彼はそれまでの仕事をやめて、父や看病をする家族のサポートをするために地元に戻りました。
それまでに貯蓄をしてあったので経済的にゆとりがあった事と、仕事を辞めた事でそれまでになかった時間のゆとりができていた事、幸いにも父の病状も良くなって安定してきた事から、ネイサンは、自分がやりたい事にチャレンジできる良い機会かもしれないと思いました。
そしてフリーランスでビジネスを始める事を決意し、中古のスクールバスを買って、移動しながら仕事のできるオフィスを作ったのです。
作品づくりのために森の奥や山などで何日も過ごすことの多いネイサンのバスは、広い作業台や仕事で使う道具などの他に、簡易式のキッチンとゆっくり休むことのできるソファベッドが備え付けられています。
機能性はもちろんですが、デザイナーである彼のセンスに基づいて、見た目の美しさも大切にしてあります。
デザインの授業では、見た目のきれいさを考える前に、まず使いやすさを計算しなさいと教わりましたが、彼は自分のバスではその反対の事をしました。
見た目重視の内装にした分、少し不便に感じることもありますが、自身のオフィスをとても気に入っています。
このバスで今の仕事や生活を始めてから、ネイサンが最も大きく学んだことは、急がば回れということです。
簡単で手早くできる方を選んでしまうと、結局後でミスが出たりやり直したりすることになるからです。
また、ネイサンは、「Yesterday, you said tomorrow.(昨日あなたは、明日と言った=あなたは昨日、やると言っていたけど、まだやってないじゃないか)」という言葉を大事にしています。
彼のようなライフスタイルに憧れる人に、ネイサンが言いたい事は、自分のやりたい事について、怖がってそれをしない言い訳を考えるのではなく、とにかくやってみる事が大切だという事なのです。
実際に始めてみると、不安や怖いという気持ちが思っていたよりも小さくなっていくからです。
何でも第一歩がいつも最大の難関で、その後は楽に感じられるようになっていきます。
バスやバンなどを手に入れてみる事がその第一歩となるのではないでしょうか。