こんにちは。TAKUTAKU編集部の佐藤です。
今回は静岡県で建築設計事務所を営む、黒田さんに話を伺いました。
黒田さんは自宅兼モデルハウスの24坪の家で夫婦と小学生の子どもの家族3人で暮らしています。
黒田さんの「小さく作って、必要に応じて大きく育てる家」の考え方は、これからの”暮らし”にとても大切な考え方だと感じました。
小さな家について
黒田:
はい。小さな家はまだ一般的になかなか共感されにくいんですけどね。(笑)
今は住宅展示場に見に行って、ハウスメーカーの家を選ぶというのが主流です。自分で家を建てるということは考えたことがない人がほとんどですね。
みなさん忙しいんでしょうね。自分で作るとなると、設計士に依頼したり、工務店に頼んだりと、面倒なことは多いので。
黒田:
一般的な家づくりでは、子育てなど、数十年間の生活変化を織り込み、細部まで造り込んで一気に完成させます。
そうすると、はじめにお金がものすごいかかるんです。ローンも長い間払わないといけない。
でも、「無理せず小さく始めて必要に応じて、家を育てていく」というやり方もあると思うんです。
小さく始めれば、初期の費用が抑えられます。初期費用を最小限まで抑えて、できるだけローンに縛られず、“育てる楽しみ”のある家づくりをしたいと思っているんです。
最近では生活も変化していて、子どもを何人生むかも分からないし、子どもも就職したら巣立ってしまう可能性もあるでしょう?
将来のことや必要なものをよく考えて作るっていうのはとても大事だと思うんです。
佐藤:とても分かります。
黒田:
この家にはテレビとエアコンがないんです。テレビはもう長いこと観ていません。
ネットショッピングも最近は使っていないですね。ミニマリストというわけではないのですが、必要なものを考えて買うようにしていますね。
テレビがなくても意外とやることは多くて、「どこでテレビ見る時間あるんだろう」と今では感じますね。
黒田:
某テレビ局で働いていました。30歳くらいの時に、人生を逆算して、45歳の時どうしていたいだろうと考えた時に「このままではいけない」と思ったんです。
佐藤:そこから建築の道へ進んだのですか?
黒田:
いや、色々、農業や陶芸なども考えたりしましたね。その当時は転職するという人も周りに少なかったので、大変でした。考えた末、専門学校や設計事務所などで建築を学んでから、独立しました。
黒田:
どこだろう。空気が回遊するところですかね。屋根がむき出しの構造で、ひとつの屋根をかぶせたような造りなんです。天井部分で部屋が一つになっていて、空気が全てつながっているんです。
天井を張ってないから雨が降り始めたのも分かるし、足音でスズメやカラスも分かるんですよ。自然と繋がっているように感じる家です。
あとは無垢の木しか使っていないというところです。湿気が出たら吸ってくれ、空気が乾燥したら吐き出してくれます。
見た目の美しさというのも意識していますね。魅力的な街並みをつくっているかどうかは大切にしています。
佐藤:周辺の雰囲気もとても良いですね。
黒田:
土地を探すのはとても大変でした。100箇所くらい見ているんじゃないでしょうか?八ヶ岳や北海道とかも見に行きましたよ。
良さそうな所があれば実際に設計図書いてみて、どんな暮らしになるかイメージしてましたね。幻の設計図もたくさんありますよ。
佐藤:100箇所!すごいですね。
黒田:
でも今はなかなか落ち着いて家を建てるという状況ではないのかもしれないです。仕事をしていると場所も限られてきますし、分譲地を買ってローンを組むとなると、すぐに図面が必要になります。
時間と資金に余裕がある人でないと、難しい状況にはあると思います。
そういう意味でも、理想の家を作るために、小さな家というのはいいのかもしれません。
普通の流れでは土地を決めてから、日の方向や風の向き、隣の家の窓の位置など、何から何まで考えて設計するのが基本ですが、土地に合わせて設計をするので、お客様に家のイメージがない状態なんです。それだと少し選ぶのが難しい人もいますよね。
小さな家であれば、小さい分、向きの反転などをすれば、その土地にぴったり合う形にハメることができるので、大体の家のイメージがついた状態で、家を決めてから土地を選ぶということも可能です。
専門的な人からすると怒られてしまうかもしれませんが、住む人のことを本当に考えると、こういった家選びもこれからの時代には合うんじゃないかと思っています。
佐藤:なるほど。選択の幅が広がりますね。家を自分で設計できるというのがとてもうらやましいです。
黒田:
自分でつくるという選択肢があるのはいいですね。キッチンとか意外と安く作れるんですよ。
この庭も自分で作ったんですよ。石を集めてきて積んだり、木を植えたり。時間はかかりましたけど。
専門の人に頼んだら100万円かかることを時間をかけてでも自分で行えば、払うはずだったお金を払わずに済んだことになる。それは100万円稼いだことと同じです。その上、自分でやる楽しさもあります。
黒田:
「小さな家」というと何か制約が多くなってしまう印象があるかと思うのですが、設計をしたり、自分で実際に生活してみて思うのは、むしろたくさんの「自由」を手にできるということです。
空間的な自由だけでなく、自分たちの人生を自分たちで創っていけるという、”かけがえのない”自由。
自由を求めることは、それと引き換えに孤独を得ることにもなりがちですが、僕は孤独だとは思っていません。こうして家族で楽しく暮らしていますし、世界中で「小さな家」を求める人が増えているのを感じているからです。こうして取材にも来てくれましたし。(笑)
みなさんも「小さな家」の仲間になって、「自由」を手にしませんか。
家のレポート
黒田さんの住む24坪の平屋。いい感じで目隠しになっている庭は黒田さんの手作り。緑がとてもきれいに色づいています。
個人的なおすすめはこのウッドデッキ。ゆっくり落ち着ける最高の空間です。部屋の床と同じ高さのウッドデッキは、拡張された部屋のように使うことができます。外の自然と一体になったような家です。しかしそれだけではありません。このウッドデッキにはもう一つ特徴があります。
このように格子の扉がついているのです。全く雰囲気が変わりますね。この格子には鍵をかけることができるので、夏の夜でも窓を開けておくことができます。
室内から格子の扉をした状態を見るとこんな雰囲気です。日差しを程よく遮ってくれます。見学した日はとても暑い日だったのですが、格子をするとかなり涼しくなりました。
窓の大きな室内は、圧迫感がまったくなく、普通の家より広く感じます。天井がむき出しで、天井を隠さないのも広く見える秘訣と黒田さんは語ります。
無駄なもののない室内。テレビのない黒田さんの家では”必要なもの”・”好きなもの”だけに囲まれた魅力的な空間です。ピアノやギターがあるのがステキですね。
子どもの勉強机。こんなに整理整頓できる子どもがいるなんて。大人も顔負けです。
とても整理されたカウンターキッチン。モデルハウスかと思うキレイさです。
こちらは和室。とても落ち着いた和室。畳の下は収納になっているとのことです。和室の天井部分もリビングや玄関とつながっています。
和室からリビングやデッキを眺めるとこうなっています。和室にいてもリビングやデッキとつながっているような感覚です。
続いて玄関を見ていきましょう。写真の左の方を見ていただくと、和室とつながる小窓があります。家族が家のどこにいても、ひとつの空間にいるような、そんな家です。
この玄関、とても広い玄関なんです。24坪と思えない空間です。
そして驚くのは玄関と同じスペースにこの作業用空間があるんです。あえて玄関と区切らず、一緒の空間にすることで、どちらも広々とした場所となっていてとても心地よいです。(写真では同じスペースであることが伝わりにくいですね。すみません。。)
続いてお風呂。お風呂の雰囲気最高です。雰囲気と機能性を兼ね備えたようなお風呂ですね。目線の高さに小窓があるのもステキ。
もちろん洗面所もありますよ。とても広々としています。なぜでしょう。小さな家という感じが全くしません。むしろとても広い印象です。
それでは、続いて家の中心のロフト部分を見てみましょう。このはしごを登ります。
はしごを登るとこんな空間が広がっています。ロフトを通じて全ての空間が繋がっています。そしてロフトから部屋全体を見渡すことができます。
玄関を覗くとこんな感じ。
ロフトからリビングを眺めるのもいいですね。
全ての空間がつながっていて、家族がどこで何をしていても、感じとることができるような家でした。
そして、仕切りの使い方や、部屋と部屋とのつながり、外を見せる窓の使い方など、24坪という限られた面積でありながら、それを全く感じさせず、むしろ広く感じさせる造りにはとても驚きました。
黒田さんのこだわりや、家づくりの楽しさがにじみ出ているような魅力的な空間でした。
まとめ
黒田さんの暮らしや設計のお話は、「暮らし」を考えていく上でとても大切なことが詰まっているように感じました。
“将来のこと”や“本当に必要なもの”を考えた暮らしや家づくり。
そして、ゆっくりと時間をかけて、“自分で作る”家づくり。
黒田さんは「家」という視点だけでなく、「良い暮らし」「良い人生」という視点で家を考えているのだと感じました。
単に、見た目だけがいい家ではなく、「住んでいる人の負担にならず、幸せを感じる家」そんな家を設計されているように思いました。
そして、黒田さんの家の設計からは、小さな家の無限の可能性のようなものも感じた気がします。
窓の使い方、仕切りの使い方、空間の捉え方によって、狭い空間はその狭さを感じさせません。その設計に、「暮らしの中で何を大切にするか」という視点を掛け合わせれば、小さい家でも全く不自由なく、逆に優雅に伸び伸びと暮らすことができます。
小さい家を考えている方はもちろん、「自分の理想の家を作りたい」という人にも参考になるお話を聞けたような気がします。
そして、黒田さん夫婦の温かく、謙虚な人柄もとても魅力的でした。ぜひ小さな家をお考えの方は黒田建築設計事務所を見てみてください。
黒田建築設計事務所の情報
会社名 | 黒田建築設計事務所 |
HP | http://www.geocities.jp/krd_aa/ |
会社所在地 | 〒 421-0303 静岡県榛原郡吉田町片岡2056-1 |
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