働き方

旅する本屋「放浪書房」〜革のトランクを1個買って始めた〜

投稿日:2017年5月6日 更新日:

放浪書房

Photo by 放浪書房

旅をしながら、旅先で仕入れた本を売り歩く。”人力移動型”の一風変わった本屋「放浪書房」を行う富永さん(通称:とみーさん)にお話を伺いました。

現在連載中の記事です。

第1回:旅する本屋「放浪書房」の始まり〜革のトランク1個を買って始めた〜
第2回:放浪書房の小商い 〜タイムアドベンチャーレコード〜
第3回以降は公開次第追加。

放浪書房の始まり

ー 放浪書房を始めたきっかけはなんですか?

一生フラフラしたい。そうしたらこの仕事に行き着きました。

きっかけと言えることは、高校を卒業して、ママチャリで四国を一周したことです。リュックに衣食住の家財道具一式を詰め込んで、野宿しながら、1ヶ月間旅をしました。自分で考えながら、自分の足で旅したことで旅の楽しさに目覚めたんです。

それがきっかけで旅の魅力に惹かれて、バイトをしては旅に出るということをしていました。

そんなある日、バイトをしている時に、「外がめちゃくちゃいい天気なのに、自分は室内で何やってんだ」という気持ちになったんです。

その時に、「旅先で稼げばいいんだ。」という気持ちが浮かびました。そして、四国を回っている時に、流木を拾い、アクセサリーを作っては売りながら旅をしている方がいたことを思い出したんです。

当時付き合っていた人に、好きだった本を仕事にしたいと話した所、「旅先で本を売りながら、旅すればいいんじゃない?」と言われ、革のトランク1個を買って始めました。

ー いつから放浪書房をはじめたのですか?

2006年から始めたので大体10年間くらいです。

はじめは生計を立てるなどは考えていなくて、軽い気持ちで始めました。

ー その時にそういうスタイルで仕事をしている人はいたのですか?

その当時はほぼいなかったです。中目黒のCOW BOOKSという本屋をやっている松浦弥太郎さんが、トラックの移動書店をやっていました。

当時、自分は車の運転が得意ではなかったので、「歩きだな」と思って、歩きで始めました。

放浪書房

Photo by 放浪書房

放浪書房は何をしているのか

初期の放浪書房

Photo by 放浪書房
ー どんな場所に出店しているのですか?

3年前くらい前までは、旅先の街かど、路上でいきなり店を開くというスタイルでした。

防水コンテナ2台分の旅本、敷き布一枚、革トランク、手製のタペストリーと「旅の本、あります。」の看板、スナフキンのバルーン(今で4代目)キャリーカートに積んで、背中には衣食住詰まった巨大なリュックを背負って、18切符や高速バスで旅していました。

物見遊山もするけど、旅の費用を稼ぐために路上商いする。

東京の駅前でジャンプとか週刊誌売ってるおじさん居ますよね?あんなイメージ。

当然、無許可。笑

人の流れがある駅前や商店街はもちろん「ここにお店があったら面白いな、楽しいな」という場所に出店していました。

例えば、眺めのいい橋のたもとや、宍道湖のほとりなど、絵になりそうな場所がそれ。

宗谷岬や納沙布岬で出した事もあります。

当然、あんまり売れないんだけど、実より、名や花をとるみたいなこともしてました。(日本最北端、最東端の本屋という称号)

若かったな。笑

Photo by 放浪書房

今では色んな土地に知り合いが出来て、声をかけてもらえるようになりました。カフェの軒先やお寺の庭など、様々な場所に出店しています。ブックイベントなんかに呼んで貰えたりもします。旅先でTwitterやfacebook見て声かけてくれる方も多いです。

昔との違いは、車を使うようになった(移動手段であり家、仕事場)のと、手製の屋台「小商い専用屋台コアキーナ」を使うようになったのでかなり「お店感」が出るようになりました。

呼んで頂く場所の雰囲気、テーマに合わせて屋台型だったり、小屋語りだったりで変化しながら、いつも新鮮な気持ちで商いしてます。

当初は放浪書房で生計を立てること、それで家族を養うとかが目的ではなく、大好きな旅をエンドレスに続けていく為の旅費生活費を稼ぐ手段として本を売っていました。

放浪書房としての商いの目的は11年経った今も変わっていません。

ー どんな本を扱っているのですか?

「旅の本」だけを扱っています。広い意味での旅なので、働き方や小屋の本も扱っています。本は旅の行く先々で仕入れて、次の町で売っています本も旅をさせたいと思っているんです。

人と同じように、本もめぐりあいを大事にしています。意外と「こんな本、探していたんです」とお客さんが言ってくれることがあるんです。

ー 今までどこを回ったのですか?

行っていない県は、長崎と佐賀だけです。

全部回るとかは考えていないんです。縁のある場所に行っているので、1年で何回も行く場所もあります。

仕事の楽しみ

ー 旅の楽しみはなんですか?

旅に商いをくっつけることで思わぬ出会いと繋がりが生まれることですかね。

よく「旅をしてると色んな出会いがある」と思われるけど、半分合っていて半分間違ってる気がします。

ひとり旅で知り合えるのって、同じ旅人や宿や入った店の人。いわば“非日常”にいる人ばかり。その土地で暮らしている人の“日常”と交わることってあまりないんです。向こうもこちら(旅人)を非日常の別の世界の人として認識してたりします。

でも、放浪書房という商いを通すことで、日常を生きてるその土地の人に近づくことができて、商いという行為を通じて、すごく自然な形で価値観や時間や空間を共有できるんです。

それが放浪書房(旅商い)でしか味わえない旅の魅力かもしれません。

不思議なもので、一週間普通に旅しても見えないもの、分からない土地や人の気質、自分との相性みたいなものが、商いしてると一日で分かる。

この感覚と体験が、2015年にプロデュースさせてもらった広島県の移住定住政策のイベントに繋がりました。

Photo by 放浪書房
ー これまで、大変なことなどはありましたか?

おまわりさんにはよく注意されますね。

それ以外には、東急ハンズでイベントが入っているときに、道の途中で、車が壊れてしまったんです。「車が壊れたのでイベントに行けない」と連絡したのですが、イベントの予定が入っているため、行かざる終えない状況でした。

JAFに連絡して、東急ハンズまでレッカーで運んでもらい、荷物を搬入しました。その後、再度レッカーを呼び、駐車場に車を停め、そしてイベント後、修理するために再度JAFを呼びました。1回の故障で3回もJAFのお世話になりました

JAFは本当にいい。JAFの優待にもいつもお世話になっています。

ー これからやりたいことや夢はありますか?

夢って特に無いんですよね。やりたいことはやっているんです。

その時にやりたいことを、自分のできる形で小さく実現させているから。

もちろん結果を踏まえて軌道修正したり、ブラッシュアップは常にしています。

例えるなら、ドラクエで初期装備でできるとこまでやってみるみたいな。長くやっていればそれだけ経験値が上がってくるじゃないですか。
その時々で必要な武器やスキルを手に入れるようにしています。

そんな感じでこれからも自分のやりたいことを無理せず楽しくやっていきたいんです。

感想

放浪書房と聞くと、一見、ゆるい暮らしのように思われるかもしれませんが、全くその逆で、自分の生き方に芯を持ち、そのライフスタイルを追求しながら暮らしているという印象を受けました。

放浪書房のことを聞いた人の中には「放浪書房だけで食べていけるの?」と思う方もいるといいます。とみーさんは、放浪書房だけでなく、放浪書房に関連した5つの事業を行いながら、稼ぎを得ています。それらについて知ると、より放浪書房やとみーさんの考え方についての理解が深まると思います。

ぜひ次の記事も見てみてください。

放浪書房情報

名前 放浪書房(ほうろうしょぼう)
HP http://horoshobo.com/
ブログ http://horoshobo.com/?page_id=98
SNS Twitter / Facebook
放浪書房

-働き方
-

執筆者:

関連記事

ホテルマンから旅人へ

「失敗が最大の親友」ホテルマンから動画で収入を得る”旅人”への転身

エルリックは今世界を旅しながら、その様子の動画を上げることで収入を得て生活しています。 4年前に大学を卒業。何をすればいいか分からず職を転々としました。それでも常にクリエイティブな分野で活躍したいと考 …

放浪書房-タイムアドベンチャーレコード

放浪書房の小商い 〜タイムアドベンチャーレコード〜

本の人力移動販売を行う「放浪書房」は関連する小商いを複数行うことで稼ぎを作っています。それらの小商いについて知ると、今の放浪書房の状況や、放浪書房の想いの部分が伝わると思います。 第1回:旅する本屋「 …

バンでコーヒーの移動販売

旅をしながら稼ぐという暮らし方 /好きなことで生きていく

こんにちは。TAKUTAKU編集部ふずです。みなさん、旅は好きですか?僕は好きです。 「好きなことで生きていく」というと何だか批判の対象になる風潮がありますが、シンプルに考えると、好きなことで生きてい …

石ぱくたそ

心が温まるお金の稼ぎ方 – ゼロからイチを生み出す

こんにちは。TAKUTAKU編集部ふずです。 今日はお金を稼いだ事例を紹介します。お金の事例といってもギスギスしたものでなくて、心に少し刺さるものがある、「自分も考えてみよう」「こんなことしてみたい」 …