両親から不動産の売却を頼まれた、両親が亡くなった、両親が病気になったなどの理由で、子どもが親の不動産売却を進めることがあります。
しかし、不動産売却は人生で何回も経験するわけではないため、一般の方は何から手をつけてよいのかわからないことがほとんどです。
他人名義の不動産売却であればなおさらそう感じるでしょう。そこで今回は子どもが親名義の不動産や家を売却するときの流れや注意点、不動産を高く売るコツなどを徹底解説します。
両親の不動産・家を売却するときのパターン
親名義の不動産や家を売却するときのパターンは主に4つあります。まずはこのパターンをひとつずつ解説します。
親名義の不動産・家を代理で売却する
親名義の不動産、家を売却するときの最も単純な方法が代理による売却です。代理とは本人に代わって、別の人間が意思表示を行ない、法律行為(今回の場合は不動産や家の売却)を行うことを指します。
代理人には任意代理と法定代理の2種類が存在します。
任意代理とは親と代理人の契約によって発生する代理です。一方の法定代理は法律によって定められた事項に基づき、発生する代理になります。
すでに成人した子どもが健常な両親の代理人となる場合は任意代理に該当します。
不動産売却で任意代理を立てる主なケースは、親が遠方に住んでいたり、仕事が忙しいなどの理由で売却活動ができないときです。
ちなみに代理で不動産を売却した場合、その効果は本人に及びます。つまり売却で得たお金は子どもである代理人ではなく、本人である親に入金されるということです。
親(名義人)が売却の判断や決断を下せないケース
名義人である親が売却の判断や決断を下せないケースとは、親が認知症などになった場合です。名義人が認知症を患うと、不動産や家の手続きを行う力がなくなり、意思を確認できない場合もあります。
認知症を患った親は今後、介護施設などに入所するため、子どもは売却を検討することになります。このようなケースでの不動産や家の売却ですが、成年後見制度を利用することで本人(親)に代わって、子どもが手続きを行うことができます。
成年後見制度とは認知症や精神障害により、判断力が十分ではないとみなされた成人にとって代わり、子どもなどの後見人が財産の管理やさまざまな法律行為を行うことを指します。
詳細は後述しますが、成年後見制度を利用した不動産売却は任意代理を立てるケースと比べると若干の手間を要します。
親(名義人)から相続した土地や家を売却する
親が亡くなって相続が発生すると、親が所有している不動産や家は相続人が相続します。
名義人である親の配偶者(夫もしくは妻)も亡くなっている場合は、相続人は子だけとなるため、子どもが複数いるケースでは人数に応じて平等に相続権を持ちます。
不動産の評価額にもよりますが、相続税が発生しますので、支払い忘れなどを起こさないことも大切です。
贈与目的の売却
親の代理人として不動産売却を行うケース、親が認知症などで意思表示ができずに不動産売却を行うケースでは、売却後のお金は親本人のところに入ります。
しかし、贈与を目的とした売却の場合は、子どものところにお金が入ってきます。
ちなみに贈与の場合は両親が住んでいる家を売ることは現実的ではありませんので、主に土地の贈与が想定されます。贈与とみなされるのは、主に親名義の不動産を子どもの名義に変更したときなどです。
贈与の手続きは単に名義変更をすればよいだけなので、非常に簡単です。しかし、詳細は後述しますが、贈与は支払う税金が高くなる点がデメリットです。
両親の不動産・家を売却するときに必要なもの
親(名義人)の不動産や家を売却するときに必要なものをまとめましたのでご覧ください。
両親の不動産・家を売却するときのみ必要になるもの
まずは親の不動産売却を行うケースでのみ必要になるものをまとめました。
- 親(名義人)の実印
- 親(名義人)の印鑑証明
- 親(名義人)の身分証明書
- 親(名義人)の住民票
- 委任状
- 代理人(子ども)の本人確認書類
不動産売買の原則は名義人が手続きが行うため、代理人を立てる場合は委任状が必要となります。また、仮に委任状を準備しても仲介契約を締結する不動産会社は一度名義人である親と顔を合わせるのが一般的です。
その他、登記に関しても委任状で対応することができますが、実際に登記する司法書士は名義人と面会して、売却の意思表示を確認します。
親子によっては親の実印の場所を知っています。また印鑑証明や住民票は本人でなくとも請求することができます。つまり実印がある場所さえわかれば、親の承諾なしに勝手に書類を用意して、売買行為を行なえるということです。
しかし、もちろんこのような売却行動は違法行為になります。決済の場を仕切り、登記手続きを行う司法書士には取引きや登記の公平性、確実性を担保する必要がありますので、当事者本人(親)の意思を確認する義務があります。
この司法書士の意思確認があることによって、親に黙って不動産を売却するという違法行為を防ぐことができます。ちなみに委任状が必要になる手続きは以下のとおりです。
- 不動産会社と締結する媒介契約
- 買主と締結する売買契約
- 不動産登記
また親の実印、印鑑証明、身分証明書、住民票は委任状を作成する際に必要です。さらに代理人は代理人であることを証明するための、本人確認書類(顔写真入りのもの)が必要になります。
その他に用意・準備しておくもの
不動産や家の売却には準備しておくものや必要書類が数多くあります。委任状や本人確認の書類は用意できても、これらの必要書類などがないと売却できないというケースもありますので、事前準備をしっかりとしておきましょう。
不動産や家の売却で必要になるものは以下のとおりです。
- 登記済権利書もしくは登記識別情報
- 固定資産税納税通知書・固定資産税評価証明書
- 土地測量図・境界確認書
- 登記簿謄本もしくは登記事項証明書
- 売買契約書
- 建築確認済証・検査済証
- 建築設計図書・工事記録書など
- 物件の図面・設備の仕様書
- マンションの管理規約・使用細則・維持費関連書類など
- 耐震診断報告書・アスベスト使用調査報告書
- 地盤調査報告書
- 住宅性能評価書
- 既存住宅性能評価書
- 販売時のパンフレットや広告
ご覧のように不動産や家を売却するときは、多くの書類が必要になります。ちなみにこれらの書類の中には提出が必須ではなく、任意のものもあります。また土地、一戸建て住宅、マンションなど売却対象が変わることで、必要書類も変わってきます。
上の表を見るとマンションの管理規約、使用細則、維持費関連書類などがありますが、これらは土地や一戸建て住宅の売却にはもちろん不要です。
その他、土地測量図や境界確認書はマンション売却時には不要、土地のみの売却の際には物件の図面や設備の仕様書は不要です。
このように土地のみを売却するのか、物件も売却するのかで必要書類も異なってきますので、詳しくは媒介契約を結ぶ不動産業者の担当者に聞くようにしましょう。
ちなみに任意で揃える書類はなくてもかまいませんが、地盤調査報告書や住宅性能評価書など、土地や物件の構造を客観的に示す書類は買主も参考になります。
これらの書類があることで物件購入につながる可能性もあるため、任意のものも含めて、必要書類はできるだけ多く揃えておくようにしましょう。
両親の不動産・家を売却するときの流れ
ここからは実際に両親の不動産や家を売却するときの基本的な流れを解説します。
親(名義人)の不動産・家を代理で売却する場合
まずは親の不動産、家を任意代理という形で売却する場合の流れです。以下に基本的な流れをまとめましたのでご覧ください。
親(名義人)の不動産・家を代理で売却するときの流れ
- 名義人である親に売却の意思があるか否かを確認する
- 売却の意思が確認できたら委任状や代理人の本人確認書類を準備する
- 不動産業者の選定、媒介契約の締結
- 不動産の売却を進める
- 購入希望者が現れたら親同席のもと売買契約を締結する
- 親同席のもとで不動産引渡し手続きを行う(司法書士の意思確認あり)
親の不動産や家はたとえ子どもであっても、親の同意なしでは売ることができません。そのため、親名義の不動産や家を売却するときは、まず親に売却の意思があるか否かを確認しましょう。
同意を得ることができれば、その後は不動産業者選び、立ち会い、買主の内覧や内見対応は代理人である子どもが対応してもかまいません。ただし、実際の売買契約時および決済取引の日は必ず名義人である親が同席する必要があります。
また押印も名儀者本人が行う必要があります。売買契約や決済取引が行われるのは主に不動産会社や銀行などの金融機関になります。
そのため、仮に親の体が悪くて自宅から出られない場合などは事情を説明して、契約取引の場を親の自宅などに変更してもらいましょう。
親(名義人)が認知症などの場合
親が認知症などで売却の意思表示を行うのが難しい場合は、以下のような流れで不動産売却を行うことになります。
親(名義人)が認知症などのときの不動産売却の流れ
- 本人所在地の家庭裁判所に成年後見制度開始の審判を申し立てる
- 裁判所から依頼された医師が本人の意思能力を確認する
- 意思表示が難しいと診断されると、後見人の選定や審判の確定が行われる
- 不動産業者の選定、媒介契約の締結
- 不動産の売却を進める
- 購入希望者が現れたら成年後見人が本人に代わり売買契約を締結する
- 家庭裁判所の許可を得る
- 家庭裁判所の許可が下りれば、売買代金の精算や所有権移転などの登記が行われる
親が認知症などで売却の意思表示ができない場合は、成年後見制度を利用することになります。後見人になることができる人は以下のとおりです。
- 親族、近親者
- 弁護士
- 司法書士
- 社会福祉士
- 法人
後見人は基本的に子どもや配偶者などの親族、近親者が行うのが一般的です。しかし、他人の財産管理をすることになるため、以下のような人は法律で後見人になることはできないと定められています。
- 未成年者
- 過去に後見人などを解雇された履歴がある
- 破産者
- 本人に対して訴訟を起こした者、その配偶者、直系親族
- 行方が不明
親族や近親者にこのような欠格事由があると、後見人を選定することができません。そのため、成年後見人制度は親族外の弁護士や司法書士が選ばれることもあります。
また、仮に子どもなどの親族が後見人に選任されても、家庭裁判所の許可なしでは売却を行うことができません。これは過去に成年後見人が成年被後見人の財産を不当に扱う事件があったためです。
親(名義人)から相続した不動産・家を売却する場合
親の死去に伴い不動産や家を相続した場合の売却の流れは以下のとおりです。
相続の不動産売却の流れ
- 不動産名儀を相続人(子ども)に変更する
- 不動産業者の選定・媒介契約の締結
- 不動産の売却を進める
- 購入希望者が現れたら、売買契約の締結
親から相続した不動産、家は故人の名義では売却できないため、不動産業者と契約を結ぶ前に必ず名義変更を行っておきましょう。
贈与目的で親(名義人)の不動産・家を売却する場合
親から不動産や家を贈与された場合の一般的な売却の流れは以下のとおりです。
不動産・家を贈与されたときの売却の流れ
- 親子間・兄弟間で不動産贈与の話し合い
- 親の承諾を得て、名義を変更する
- 不動産業者の選定・媒介契約の締結
- 不動産の売却を進める
- 購入希望者が現れたら、売買契約の締結
また贈与目的で行う売却にはもうひとつの方法もあります。
- 名義人である親が先に不動産・家を売却する
- 売却で得たお金を子どもの口座へ振り込み、子どもの収入とする
ご覧のように贈与目的で不動産、家を売却する場合は2種類の流れが存在します。
不動産や家の名義を子どもに変更してから売却する流れは「不動産の贈与」、不動産や家の売却代金を子どもの収入とするなら「現金の贈与」に該当します。
基本的に不動産の贈与と現金の贈与では、不動産の贈与ほうが納める税金を安くすることができます。そのため、贈与目的で不動産売却を行う場合は、名義人を変更してからの売却をおすすめします。
両親の不動産・家を高く売るためのポイント
親名義の不動産や家を売却する流れを把握したら、次は「できるだけ高く売るには?」という疑問を解決してみましょう。不動産、家を高く売るためのポイントをまとめましたのでご紹介します。
早期売却を心がける
売却を仲介してくれる不動産業者を選定し、契約を締結したらできるだけ早期の売却を心がけるようにしましょう。
一般的に不動産や家を売り出してから、買い手が見つかるまでの平均売却期間は3ヶ月~4ヶ月といわれています。
もちろんこれはあくまでも目安で人気エリアや築浅物件だと1ヶ月前後で買い手が現れることもありますし、逆に駅まで遠いといったエリアなどは売れるまでに時間がかかる傾向にあります。
そしてできるだけ早期の売却を心がけたほうがよい理由ですが、不動産や家の資産価値、購入希望者が抱くイメージなどが関係しています。
基本的に不動産や家の資産価値は時間の経過とともに下落していきます。特に一戸建て住宅は築20年が経過すると、資産価値がゼロになるともいわれています。
また売り出しから何ヶ月、何年も売れない状況になると、買い手は「あの土地や建物はずっと売れ残っているけど何か問題でもあるのか?」といった疑問を抱くことになります。
こうなるとその不動産や家に対する印象もどことなく悪くなってしまう可能性があります。これらの理由から両親の不動産や家を売却するときは、できるだけ早期で売ることが大切となります。
複数の不動産業者に査定を依頼する
不動産や家を高く売るポイントとして必須となるのが、複数の不動産業者に査定を依頼することです。複数の不動産業者に査定を依頼することで、大体の売却価格の目安を把握することができます。
また各不動産業者は「物件の売買が得意」「賃貸仲介が得意」といったそれぞれの得意分野があります。売買仲介が得意ではない業者に依頼すると当初予定していた売却価格よりも、大幅に下回る価格でしか売れないこともあります。
その他、悪質に近い不動産業者だと明らかに他の業者より高い査定額を提示し、売主の興味を引き、媒介契約を結ぼうとします。
しかし、査定額は実際に売れたときの価格ではないため、明らかに相場とかけ離れた価格を提示する業者には注意しておきましょう。もし、そのような業者がいる場合は査定額の根拠などを示してもらうことが大切です。
媒介契約の種類を学ぶ
不動産や家を高く売るには不動産業者と締結する媒介契約の種類を把握しておく必要もあります。媒介契約の種類は主に以下の3つです。
- 専属専任媒介契約
- 専任媒介契約
- 一般媒介契約
専属専任媒介契約
専属専任媒介契約とは不動産業者1社にしか依頼できない契約です。自分で買い手を見つけても、必ず間に不動産業者を挟む必要があります。
このような理由から専属専任媒介契約は後ほど紹介する専任媒介契約、一般媒介契約と比較すると、最も拘束力が強い契約といえます。
ただし、不動産業者には売主に対して週1回以上の状況報告を行う義務が課せられていますので、こまめに売却の進展状況を確認したい方にはおすすめです。
専任媒介契約
専任媒介契約も不動産業者1社としか契約を締結できません。しかし、専任媒介契約は自分で買い手を見つけた場合には、不動産業者を挟まずに売買契約を結ぶことができます。
これによって不動産業者に支払う仲介手数料をカットできるなどのメリットがもたらされます。
また専属専任媒介契約にもいえることですが、不動産業者1社のみと契約を結ぶため、窓口がひとつとなり、情報を整理しやすいという利点もあります。
売主に対する状況報告は2週間に1回以上と定められています。
一般媒介契約
最後の一般媒介契約は複数の不動産業者に売却を依頼できる方法です。複数の不動産業者が同時に売却活動を進めてくれるため、最も効率的な方法ともいえます。
また実力がないハズレ不動産業者があっても、他の不動産業者でカバーできるのも魅力的です。ただし、一般媒介契約は窓口も複数になるため、情報が整理しにくいことがあります。
その他、不動産業者の視点から見るとモチベーションが上がらない可能性も高くなります。複数の業者が存在すると自社が選ばれる確率も低下するため、不動産業者によっては積極的に営業活動を行わないこともあります。
また他の媒介契約と違って、売主に対する報告状況も義務付けられていないため、進展状況を把握しにくいというデメリットも考慮しておく必要があります。
不動産業者と媒介契約を締結する際は、それぞれのメリット、デメリットを事前に把握し、自身の売却方針に合った契約を結ぶようにしましょう。
媒介契約の種類に関しては国土交通大臣指定の公益財団法人 東日本不動産流通機構のサイトでも確認することができますので参考にしてください。
【参考サイト】REINS TOWER「媒介契約制度とは?」
売り出し価格は相場よりも少し高くする
物件の状態、エリアなどにもよりますが、最初に売り出すときの価格は相場よりも少し高くしておくことをおすすめします。と、いうのも不動産売却は買い手からの値下げ交渉が頻繁に入るからです。
この買主からの値下げ交渉を想定しておかないと、自身の希望以下の価格で売却する可能性が高くなります。具体的には相場価格の2,500万円で売りに出した物件があるとします。
そして買主から100万円の値下げ要求があり、それを承諾すると2,400万円での売却となってしまうため、相場を下回る金額となります。
これを相場よりも若干高い2600万円以上の価格で売りに出せば、仮に100万円の値下げ交渉が入っても、相場価格内で収めることができます。
また不動産売却を行うときはあらかじめ3つの価格を準備しておくとよいでしょう。
具体的には「売り出しスタート時の強気な価格」「相場どおりの価格」「これ以上値下げすることはできない価格」の3つの価格を設定しておき、時期やタイミングを見計らって、順次値下げをしていくのがおすすめです。
不動産・家を売却するときの費用を学ぶ
前述の価格設定で「これ以上値下げすることができない価格」を決めるときに、把握しておきたいのが不動産や家を売却するときにかかる費用です。
この売却費用を計算しておかないと最低価格を設定することができません。基本的に不動産売却にかかる費用には以下のようなものがあります。
- 仲介手数料
- 印紙税(売買契約書に課税)
- 登記費用(抵当権抹消費用や司法書士に支払う報酬など)
- ローン返済(すでに支払い済みの方は発生せず)
- 税金
この中で最も大きなお金がかかるのが不動産業者の運営費用となる仲介手数料と住宅ローンの残債です。不動産業者に支払う仲介手数料は以下の計算式で求めることができます。
一例を出すと2,000万円で売却できた場合の仲介手数料は66万円となります。
また売却時に住宅ローンの残債が残っている場合は、全額返済が基本です。これは住宅ローンを残したまま、抵当権を抹消できないからです。
そのため、最低価格を設定するときはこれらの支出面を考慮しておかないと、場合によっては儲けがまったく残らない可能性もあります。不動産や家の売却にかかる費用を学び、少しでも利益を残せるような状態を整えておきましょう。
掃除などを実施して、第一印象を良くする
場合によっては親などがまだ住んでいる状態で売却活動を進めることもあるでしょう。このようなケースで大切なのは「家全体をキレイにしておくこと」です。買い手は散らかったままの部屋を見せられると、購入する意欲を失うことが多々あります。
その結果、内見希望者は多いのにまったく売れない期間が続くことにもなります。このような弊害を回避するには、とにかく部屋を清潔な状態にしておくことです。
物もできるだけ少なくしておき、水回りなどが清潔な環境になっていれば、購入希望者が嫌悪感を抱く可能性も少なくなります。もし自分たちだけで清潔な環境を整えるのが難しい場合は、部分的な清掃をハウスクリーニング業者に依頼するのもおすすめです。
両親の不動産・家を売却するときの注意点
両親の不動産や家を売却するときには以下の点に注意しておきましょう。
- 確定申告は必ず行う
- 贈与は相続よりも税金が高くなる
注意点1.確定申告を必ず行う
まず1点目の確定申告の実施。これは親名義の不動産売却以外でもいえることですが、売却で利益が出た場合は確定申告を必ず行うようにしましょう。不動産売却で利益が出たにもかかわらず、確定申告を行なわないのは脱税に該当します。
また不動産売却で利益が出ずに、赤字だった場合も条件付きで他の所得(給与所得など)から控除することができるため、納める税金を安くできる可能性もあります。
このような理由から不動産を売却した際は黒字、赤字にかかわらず確定申告を行なうようにしましょう。
注意点2.贈与は相続よりも税金が高くなる
2点目の贈与に関する注意点ですが、基本的に贈与は相続よりも支払う税金が多くなります。
これは贈与税と相続税の基礎控除額が関係しています。不動産や家の名義を子どもに変更したときは、土地や建物の時価に贈与税や相続税が課税されます。
そしてこの2つの税金にはどちらも基礎控除額が設定されています。
相続税は最低でも3,600万円の基礎控除を受けることができますが、贈与税は1人につき110万円しか控除を受けることができません。
つまり贈与目的の不動産売却は相続と比較すると多額の税金がかかるということです。そのため、贈与目的で不動産や家を売却するときは相続時精算課税制度を利用することも検討しておきましょう。
相続時精算課税制度は65歳以上の親もしくは祖父母から20歳以上の子ども、孫に対して、不動産などの財産を贈与した場合において選択できるものです。相続時精算課税制度を利用すると2,500万円までは非課税とみなされます。
そして相続が発生したときに生前贈与された財産(不動産や家)に相続税が課せられることになります。この制度は節税目的で利用することはできませんが、税金の先送りをすることは可能です。
相続時精算課税制度は将来、相続税のかかる心配がない人や少しだけ相続税がかかりそうという方にはおすすめの制度です。相続時精算課税制度の詳細に関しては国税庁のサイトで確認することができますので、興味がある方は参考にしてみましょう。
【参考サイト】国税庁「№4013 相続時精算課税の選択」
まとめ
今回は自分名義ではなく、両親の不動産や家を売却するときの基礎知識を解説しました。基本的に不動産や家などの大きな資産はたとえ親子であっても、勝手に売却することは認められていません。
そのため、両親の不動産や家を売却するときは必ず名義人である親の売却意思というものを確認しましょう。また親が認知症で売却の意思を示すのが難しいケース、相続や贈与で売却するケースなど、不動産にはさまざまな売却パターンが存在します。
中には一般の人では理解や把握することができない難しい制度なども存在するため、不明点がある場合は必ず不動産業者や弁護士、司法書士に質問するようにしましょう。
多額のお金が動く不動産売却はわからないまま進めると大きな損をする可能性が非常に高いです。現在、両親の不動産や家の売却を検討している方はぜひ参考にしてください。